東京高等裁判所 昭和28年(う)2431号 判決
被告人 芳賀芳隆
〔抄 録〕
同第一点の(三)について。
刑事訴訟法第三百三十五条第二項によれば、法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならないと規定されていることは所論のとおりであるが、原審第一回公判調書中の被告人の冒頭陳述、原審第六回公判調書及び被告人提出の昭和二十八年三月五日附上申書並びに原審弁護人の弁論要旨によるも、いずれも被告人の本件犯行を正当防衛とは主張していないのであつて、ただその防衛の程度を超えたものとしているのであるから、たとえその主張のとおりであつたとしても、裁判所の自由裁量によりその刑を減軽又は免除することを得るに止まり、右は前記法条にいわゆる法律上刑の加重減免の理由となる事実上の主張には該当しないものといわなければならない。したがつて原判決がこれに対する判断を示さなかつたことはもとより当然であつて、何らの違法も存しないのである。なお刑事訴訟法第三百三十五条第二項の主張に対し、何らの判断を示さないことは、いわゆる訴訟手続に法令の違反がある場合に該当するものと解すべく、所論のごとく判決に理由を附せず又は理由にくいちがいがある場合に該当するものとはなし難く、もとより法令の適用に誤がある場合にも該当しないものといわなければならない。論旨は理由がない。